自己免疫が原因でおこる肝疾患を自己免疫性肝疾患といいます。
自己免疫性肝疾患には、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎の3つがあります。
これらの3つの疾患はよく似ています。すべて、自己免疫が原因で起こるという共通点があるからです。
しかし、同じ原因で起こるこれらの疾患にも異なる点があります。
それは、「自己抗体の種類」、「性差」、「ステロイドが効くかどうか」、「併せもつことが多い他の自己免疫疾患」の4つです。
以下でこの4つの異なる点について説明します。
自己抗体の種類
自己免疫性肝疾患には、多くの自己抗体があります。
自己抗体とは、自分の正常な細胞や組織をターゲットとしてしまう抗体のことです。これは免疫の異常が原因で作られます。血液検査をすることで異常な自己抗体がカラダで作られていないかどうかを調べることができます。
自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎にはそれぞれ、特徴的な自己抗体があります。
何という名前の自己抗体がどの疾患で多いのかを簡単に示します。
抗核抗体・・・・・・・・・自己免疫性肝炎
抗ミトコンドリア抗体・・・原発性胆汁性胆管炎
抗平滑筋抗体・・・・・・・自己免疫性肝炎、(原発性胆汁性胆管炎)
LKM抗体・・・・・・・・・自己免疫性肝炎
とくに自己免疫性肝炎では必ず自己抗体が陽性になります。これは定義の問題です。自己免疫性肝炎の診断基準に自己抗体が陽性であることが必須条件として含まれています。ですので、自己免疫性肝炎では必ず自己抗体が陽性となります。
原発性胆汁性胆管炎では、抗ミトコンドリア抗体が陽性になります。また、抗平滑筋抗体が陽性になることもあります。
性差
自己免疫性肝疾患の性差について説明します。
自己免疫性肝炎・・・・中年の女性に多い
原発性胆汁性胆管炎・・中年以降の女性によく起こる
原発性硬化性胆管炎・・男性に多い
ステロイドの効き目
自己免疫性疾患はその種類によってステロイドが効くかどうかが異なります。
自己免疫性肝炎・・・・副腎皮質ステロイド薬がとてもよく効く
原発性胆汁性胆管炎・・副腎皮質ステロイド薬の効果は期待できない(ただし、自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎のオーバーラップ症候群の場合、肝炎の勢いが強い場合には副腎皮質ステロイドが使われる)
併せもつことが多い他の自己免疫性疾患
何か1つの自己免疫性疾患を患っていると、その他にも別の自己免疫性疾患を併せもっていることが多いです。
自己免疫性肝疾患の場合にも同様です。
併せもつことが多いその他の自己免疫性疾患は、自己免疫性肝疾患の種類によって異なります。
原発性胆汁性胆管炎・・・Sjogren(シェーグレン)症候群を合併することが多い
原発性硬化性胆管炎・・・潰瘍性大腸炎を合併しやすい
まとめ
自己免疫性肝疾患には、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎の3つがあります。これらはとてもよく似ています。しかし、「自己抗体の種類」、「性差」、「ステロイドが効くかどうか」、「併せもつことが多い他の自己免疫疾患」という4つの点で異なっており、区別ための手がかりになります。