慢性肝疾患、肝硬変と亜鉛不足とノベルジン

慢性肝疾患や肝硬変では亜鉛が不足しがちである

慢性肝疾患や肝硬変の方は亜鉛不足になりやすいです。

実際、下に示すようなデータがあります。

出典:エキスパートに聞く | 肝臓と低亜鉛血症 | 低亜鉛.jp | ノーベルファーマ株式会社

Child-Pugh分類は肝硬変の重症度を示すものです。A、B、Cの順に重症度が高いです。

MELDというのは、MELDスコアのことです。

MELDスコアは、アメリカの臓器移植ネットワークで12歳以上の肝移植登録患者の重症度の判定に使われるものです。

数字が大きいほうが肝臓が悪いということを示しています。ちなみに15以上は移植をしたほうがいいと考えられています。

この図からも、肝臓が悪い方では多くの割合で亜鉛が不足していることがわかります。

亜鉛不足の肝硬変患者は早死する

海外の研究データで、亜鉛が不足している肝硬変の患者さんと亜鉛不足のない肝硬変の患者さんの生存率を比較したものがあります。

肝硬変患者の亜鉛不足は生存率低下につながる
出典:エキスパートに聞く | 肝臓と低亜鉛血症 | 低亜鉛.jp | ノーベルファーマ株式会社

この研究では、肝硬変の患者さんが1年後に生きていられるかを、亜鉛不足がある人とない人とで比較しています。

その結果、亜鉛不足がない人の1年後の生存率は、 96%でしたが、亜鉛不足があるとの1年後の生存率は77%でした。

さらに3年後の生存率は、亜鉛不足がない人で74%だったのに対して、亜鉛不足が1では51%でした。

このことから、肝硬変の患者さんの亜鉛不足は、早期死亡につながるということがわかります。

ノベルジンが低亜鉛血症に使えるようになった

以前には肝臓内科医は慢性肝疾患や肝硬変の方の亜鉛不足に対して、亜鉛を含む胃潰瘍治療薬や院内製剤の硫酸亜鉛などで対応してきました。

亜鉛を含む胃潰瘍治療薬とは、プロマックのことです。また、硫酸亜鉛は、それぞれの病院が独自に用意していました。

しかし、プロマックは通常、胃潰瘍に対して使うべき薬で、低亜鉛血症に対してメインで使うべきものではありませんでした。

このような状況の中で、2017年3月に低亜鉛血症に対して使うことができる新しい薬がでました。

ノベルジンです。

慢性肝疾患や肝硬変の方では、亜鉛が不足している頻度が高いので、血液検査で亜鉛を測定し、不足していたらノベルジンを内服することで亜鉛を補うとことができます。

慢性肝疾患、肝硬変ではいかに肝機能をいい状態に保つかが大事

肝臓の病気の方は、肝機能ができるだけ良い状態に保たれるようにすることがとても大事です。

そのためにはとくにアルブミンを合成する力を良好に保つことが重要です。

実は、アルブミン合成がスムーズに行われるためには、体内の必須アミノ酸のバランスが整っていることが必要なのです。

しかし肝硬変では、必須アミノ酸であるBCAAが不足し、アルブミン合成能が低下してしまいます。

ではなぜ、肝硬変だとBCAAが不足してしまうのでしょうか。

肝硬変でBCAAが不足する理由

肝硬変でBCAAが不足しがちな理由を理解するのに、アンモニア代謝について知らなければなりません。

下に、体内でのアンモニア代謝の模式図を載せます。

体内で最も多くアンモニアが産生される場所は、消化管です。

消化管で作られたアンモニアは門脈を通り、肝臓に運ばれます。

ここでアンモニアは尿素回路の酵素群の働きによって無毒な尿素に変えられます。

健康な人では、肝臓でアンモニアの半分が処理され、残りの半分は骨格筋などのグルタミン合成系で処理されます。

肝硬変では肝機能が低下しているため、肝臓で処理することができるアンモニアの量が減っています。その結果、骨格筋で処理しければならないアンモニアの量が増えます。

骨格筋などのグルタミン合成系は、アンモニアを処理する際にBCAAを消費します。

このため、肝硬変ではBCAAの消費が増え、その結果、体内のBCAAが不足状態となるのです。

骨格筋でアンモニアが処理される際にBCAAが使われる

肝臓での尿素回路と骨格筋でのグルタミン合成系
出典:エキスパートに聞く | 肝臓と低亜鉛血症 | 低亜鉛.jp | ノーベルファーマ株式会社

グルタミン合成系でグルタミン酸がアンモニアを取り込んでグルタミンに変換されます。

この時にBCAAが使われます。BCAAはこの結果、分子鎖αケト酸に変化します。

骨格筋でのアンモニア処理量が増えると使われるBCAAも増えます。

亜鉛不足は尿素回路の働きを弱める

肝臓でのアンモニア処理量が低下する、すなわち、尿素回路の機能が低下する原因に亜鉛不足があります。

アンモニアを取り込んで最終的に尿素へ変換するのが尿素回路の役割です。

この反応の中間あたりで関わるOTCという酵素は亜鉛酵素です。

亜鉛不足はOTC酵素の活性w低下させます。この結果、尿素回路の機能も低下します。

血清亜鉛濃度の基準値は80~130μg/dLです。血液検査を行うと、慢性肝疾患では亜鉛濃度は低下していることが多いのです。

亜鉛不足は尿素回路の働きを弱め、肝臓でのアンモニア処理能の低下の原因になります。この結果、骨格筋でのアンモニア処理の負担が増え、BCAAがどんどん使われ、足りなくなります。BCAA不足の結果起こってくるのが、アルブミン号性能の低下です。

慢性肝疾患、肝硬変で亜鉛不足を認めたらノベルジンを内服する

以上みてきましたように、慢性肝疾患、肝硬変の方は亜鉛不足があることが多いです。

亜鉛不足はBCAA不足の原因になります。これはアルブミンの低下につながります。

慢性肝疾患や肝硬変の方で血液検査で亜鉛が不足しているケースでは、亜鉛を補充するためにノベルジンを内服するといいです。