はじめに

この記事では食道静脈瘤について説明しています。

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食道静脈瘤って何?

食道静脈瘤とは、食道の粘膜の下にある静脈が拡張したり、蛇行したりし、瘤のようにふくらんでくる病気です。胃カメラの検査で確認すると、眼で見てわかるほどに静脈が膨らんでいます。

この病気は肝硬変の方に多くみられ、これが原因で亡くなる方も多いです。

食道静脈瘤は破裂すると緊急で治療を行うことが必要になる怖い病気です。

食道静脈瘤はどんな人に多い?

  • 食道静脈瘤は、肝臓に流入する門脈という血管の血流抵抗が亢進している患者さんにみられます。この状態を門脈圧亢進症といいます。
  • 門脈圧亢進症の原因となる代表的な疾患に肝硬変があります。
  • 肝硬変などで肝臓から出ている門脈という血管の圧力が亢進している患者さんに多くみられます。

食道静脈瘤の原因

  • 食道静脈瘤は門脈圧亢進症が原因となっておこります。ですので、門脈圧亢進をきたす疾患が食道静脈瘤の原因となります。
  • 胃や腸の血液は集って門脈へ流れ込み、これが肝臓を通って心臓へもどります。腸で吸収した栄養物を肝臓で処理して自分の体で使えるものに変えています。
    たとえばブタ肉を食べると、胃液中のペプシンや膵液中のトリプシンという蛋白分解酵素がブタ肉をアミノ酸まで分解します。このアミノ酸が腸で吸収され、血液とともに門脈を経て肝臓に送られ、肝臓のなかで再び合成されて人間の体の蛋白質がつくられるわけです。デンプン質はブドウ糖に分解され肝臓でグリコーゲンとなります。また、腸で吸収されたアンモニアなど体に有害なものは、肝臓で解毒されます。
    このように胃や腸の血液は肝臓を通る必要があるのですが、肝硬変や慢性肝炎では血液が通りにくくなります。門脈や肝静脈の狭窄・閉塞でも、同様に門脈に血液が停滞して門脈圧が亢進してきます。そうすると血液は別の道を通って心臓にもどろうとします。その道のひとつが食道や胃の粘膜下層の静脈で、だんだんと太くなって食道静脈瘤や胃静脈瘤となるわけです。
    毎日食物が通る道でもあり、静脈瘤が高度になると破裂して出血することになります。

門脈圧亢進症

門脈圧亢進症は何らかの原因により門脈の圧力が上昇し、それに伴い食道・胃静脈瘤、脾腫及び脾機能亢進症、腹水・胸水、肝性脳症などの症状をきたした疾患の総称です。

肝硬変などの肝臓の病気が原因で門脈の血液がうまく流れずに滞った状態になり門脈の圧力が高くなります。この状態を門脈圧亢進症といいます。門脈圧亢進症では血液が胃や食道へ逆流します。その結果、胃や腸の静脈の血液量が多くなってこぶの様にふくれる静脈瘤ができます。

肝臓に出入りする血管

出典:門脈圧亢進症とは―様々な合併症が起こる肝臓の病気のひとつ | メディカルノート

肝臓には重要な血管が3本あります。具体的には、肝臓に流入する血管である肝動脈と門脈(消化管から吸収した栄養成分などを肝臓に運ぶ管)、肝臓から流出する血管である肝静脈です。なかでも門脈は肝臓に流入する血液の3分の2を運ぶ最も重要な血管です。

門脈圧亢進症が食道静脈瘤の原因になる理由
  • 門脈圧亢進により本来であれば門脈に流入するはずの静脈血が側副血行路を流れるようになるために発生する。
  • 門脈圧が亢進することで門脈に流入するはずの血流が逆流し、胃の静脈を経由して食道の静脈から上大静脈に流入するように血行路が形成される。その結果として食道に静脈瘤が発生する。
  • まれではあるが、上大静脈や奇静脈の閉塞によって静脈瘤が形成されることもある。

食道静脈瘤の症状

食道静脈瘤はそれ自体は症状をおこしません。

食道静脈瘤も胃静脈瘤も、それ自体は痛くもかゆくもありません。肝炎や肝硬変になっても、気がつかずに経過している人も多数います。突然吐血して初めて気づくことになります。時にはタール便が続いて出血に気づくこともあります。

静脈瘤が破裂した場合に吐血や下血などがおこります。

静脈瘤が破裂すると大量の吐血が起こり、出血量が多くなるとショックをきたす。また、黒色便がみられることもある。肝硬変が原因の場合、出血が止まりにくいので特に注意が必要となる。

肝硬変が原因で食道静脈瘤ができている場合、肝硬変の症状として、手のひらが赤くなる、胸のあたりに血管が浮き出る、疲労感、倦怠感、黄疸などがでます。

門脈圧亢進症の症状が見られる。同様に側副血行路である腹壁の静脈瘤(Caput Medusae; メデューサの頭)や、直腸の静脈瘤である痔核を併発することもある。

食道静脈瘤を放置するとどうなるの?

  • 原因となっている肝臓の病気が進行すると血管が破れて出血が起こったりします。
  • 肝硬変や慢性肝炎、あるいは門脈や肝静脈の狭窄・閉鎖によって門脈圧が上昇し、その結果、食道の粘膜下層の静脈が太くなって、さらには破裂することもあります。その結果、吐血や下血が起こります。
  • 食道や胃に出来た静脈瘤を放置すると静脈血管からの出血(静脈瘤破裂)を起こす危険が高くなり、最悪の場合出血ショックにより死に至ることもあります。

食道静脈瘤の検査

内視鏡検査が基本となります。そのほか、CT検査、超音波内視鏡検査(Endoscopic ultrasonography:EUS)、経皮経肝門脈造影などが行われます。出血のおこる可能性、状態の詳細な観察、治療の効果が出ているかどうかの判断を行います。内視鏡検査により、静脈瘤の出血やびらんなど、また、静脈瘤と周りの血管などの観察を行い、治療方針を決定します。

診断の第一は内視鏡検査です。食道静脈瘤の存在の有無、存在した場合はどのような形態の静脈瘤がどの位置にあり、色調は白いか青いか、また赤色所見があるかどうか、などをみることができます。また、出血例では出血源が確かに食道静脈瘤からで、胃潰瘍などからではないことも確認できます。
その他、超音波検査(エコー検査)、CT、超音波内視鏡、血液検査なども行われます。

上部消化管内視鏡

肉眼的に静脈瘤の大きさや形態等を確認できるので主力の検査となる。他の検査では確認できない大きさの静脈瘤も診断することが可能である。また内視鏡的治療も、検査と同時に施行可能である。

X線検査

食道造影で粘膜の隆起等を確認することが可能。門脈造影側副血行路の状態を確認できる。

CT、MRI

側副血行路の状態を確認できる。

食道静脈瘤の診断

内視鏡で肉眼的に静脈瘤を確認する。検査で偶然発見されることも多い。

出典:内視鏡による治療

治療が必要な食道静脈瘤は?

出血している静脈瘤と出血してもおかしくなさそうな静脈瘤は治療が必要です。食道や胃に出来た静脈瘤を放置すると静脈血管からの出血(静脈瘤破裂)を起こす危険が高くなり、最悪の場合出血性ショックにより死に至ることもあります。予防的にこの治療を行うことにより出血のリスクを低下させることが出来ます。また、出血している場合には緊急治療としておこなう場合もあります。

食道静脈瘤の治療

静脈瘤の療法には(1)内視鏡的治療、(2)IVR(Interventional Radiology)を応用した治療、(3)外科手術、(4)薬物治療、(5)保存的治療があります。

また静脈瘤の治療は静脈瘤が破裂して出血している際に行う止血の治療と静脈瘤が破裂して出血する前に静脈瘤をつぶすのを目的とした予防の治療に分けられます。

現在の治療法の中心は内視鏡による治療で、内視鏡的静脈瘤硬化療法と内視鏡的静脈瘤結紮術が行われます。この治療は、食道や胃の静脈瘤に対して内視鏡を用いてその消失を目的として行います。

内視鏡治療としての利点はそこまで侵襲が強くないこと、欠点としては、手術と比べると再発が多いこと、治療できない場合や治療が不十分な場合もありその場合は他の治療が必要となることです。

EISとEVLを比較すると非再発率についてはEISがEVLをしのぎますが、肝機能の低下した場合(高度黄疸、低アルブミン、血小板減少、脳症、腹水)にはEVLが有効です。また、出血している食道静脈瘤の一次止血にもEVLは適切な治療法と言えます。

内視鏡的静脈瘤硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy : EIS)

  • 静脈瘤の血管内あるいは静脈瘤周囲に硬化剤を注入することにより静脈瘤の血流を遮断し廃絶治療します。
  • 食道静脈瘤の内視鏡的治療法として広く普及しているものです。内視鏡で静脈瘤を確認しながら、注射針と呼ばれる処置具を用いて硬化剤を注入して静脈瘤を固めてしまう方法です。
  • 静脈瘤を完全に消失させることがこの治療の目的で、食道静脈瘤の内視鏡的治療法として広く普及しています。基本的には2種類の硬化剤をその目的に応じて区別して使用します。オレイン酸モノエタノールアミン(EO)の血管内注入法と、エトキシスクレロール(AS)の血管外注入法があります。内視鏡で静脈瘤を確認しながら静脈瘤に直接針を刺し、EOを注入して静脈瘤を固めていきます。このとき血管内に注入されているかどうか、レントゲンを見ながら行います。血管内注入が困難になったら、血管外にASを注射し、食道粘膜を硬くすることで静脈瘤の再発を予防します。
  • 硬化薬(オレイン酸エタノールアミンなど)を血管内外に局注して止血を図る。90%以上の確率で止血可能。
EISの合併症

EISでは頻度は少ないですが肺塞栓、門脈塞栓、硬化剤による肝・腎機能障害、食道潰瘍、穿孔(消化管に穴があくこと)、縦隔炎などが起こりえます。

内視鏡的静脈瘤結紮(けっさつ)術(Endoscopic variceal ligation : EVL)

  • 静脈瘤自体を小さな輪ゴムで止めることにより静脈瘤の血流を遮断し廃絶治療します。
  • 食道静脈瘤を内視鏡で縛って取り去る方法です。EISに比べると、患者さんにとっても侵襲(しんしゅう)が少なく、簡便で安全性に優れていますが、再発も多いとされています。最近ではEISとEVLのメリットを生かしながら両方を併用(へいよう)する事もあります。
  • 内視鏡下でOリングで直接静脈瘤を結紮する。簡便に行えるというメリットがある。
EVLの合併症

EVLではほとんど偶発症は起こりません。

出典:食道静脈瘤治療(内視鏡的静脈瘤硬化療法・結紮術)|東邦大学医療センター大橋病院 消化器内科

食道静脈瘤が破裂して出血している場合の治療

  • 食道静脈瘤が破裂して吐血している時は、まず点滴で輸液・輸血を行います。出血が著しい場合は、ゼレグスターケンブレイクモアチューブを挿入して風船をふくらませて圧迫止血をします。
    循環動態が落ち着いていて出血がそれほどでもない場合は、緊急内視鏡を行って診断とともに内視鏡治療を行います。
    内視鏡治療には、内視鏡的硬化療法(EIS)と内視鏡的静脈瘤結紮(けっさつ)術(EVL)があります。EISは静脈瘤に内視鏡を使って針を刺し、硬化剤を注入して静脈瘤を閉塞させる方法です。EVLは内視鏡的に静脈瘤を輪ゴムで結紮して壊死(えし)脱落させる方法です。何回か治療することが必要です。
    そのほか、血管内にカテーテルを挿入して治療する方法も行われます。
  • 出血例に対する第一選択の治療法は EVLです。

 

食道バルーンタンポナーデ

出血時には、バルーンによって出血部位を圧迫することで止血を図る。長期間使用すると圧迫壊死を起こすため、あくまで一時的な止血手段であり、他の治療法によって完全に止血させる必要がある。

薬物療法

非破裂時には、バソプレッシンで門脈圧を低下させて止血を図る。βブロッカーやARBも有効とされる。破裂時にはバゾプレッシンとニトログリセリンの併用が行われる。

経頚静脈的肝内門脈静脈短絡術(transjugular intrahepatic portasystemic shunt; TIPS)

肝内で門脈-静脈シャントを形成する。再閉塞の可能性がある。

手術療法

食道静脈瘤では食道離断術が多く行われる。中下部食道周囲の血管郭清、食道離断再縫合を行い、脾摘、腹部食道、胃噴門部血行遮断を行う。

食道静脈瘤の治療の入院のあらまし

治療当日の朝から食事は中止して頂き、点滴を行い内視鏡室もしくは透視室にて治療を行っていきます。
治療後は翌日までは絶食となります。また感染症予防のために抗生物質の点滴や、止血剤、アミノ酸製剤の内服等もして頂きます。翌日の血液検査結果で問題なければ、お昼からお食事(流動食)を召し上がって頂きます。
静脈瘤が残存しており、治療がまだ必要な場合は1~2週間間隔で治療を行っていきます。

食道静脈瘤の予後

かつては初回出血で約40%が死亡していたが、現在では出血自体による死亡は激減し、むしろ肝予備能などの肝臓の状態に左右される。

食道静脈瘤を診る診療科

肝臓内科、消化器内科、消化器外科などで診療します。

食道静脈瘤に気づいたら

血液検査などでウイルス性肝炎の既往や肝機能異常が発見されたら、内視鏡検査を受ける必要があります。出血の危険性が高ければ内視鏡的治療を受けることをすすめます。