はじめに
この記事ではGAVE(胃前庭部毛細血管拡張症)の治療法であるAPCについて解説しました。
APCとは、アルゴンプラズマ凝固法のことです。
アルゴンプラズマ凝固法は英語で、argon plasma coagulationといいます。
この頭文字をとってアルゴンプラズマ凝固法はAPCと略されて表現されます。
GAVEについては、
でも解説しているので、参考にしてください。
GAVEは放っておくと出血して貧血を引き起こすことがあります。
GAVEに対するAPCは実際に貧血が進行した患者さんに対して行われるだけでなく、出血の予防で行われることもあります。
GAVEの概要
GAVEは胃の前庭部を中心に幅広く血管拡張を認める病態です。
胃の前庭部とは、胃の中でもとくに出口付近を指します。
特に胃の粘膜の表面に近いところの毛細血管が通常よりも拡張します。
そのため、少しの刺激でも出血しやすいです。
GAVEは肝硬変、門脈圧亢進症、慢性腎不全などを患っている人にできやすいです。
GAVEの治療
GAVEの代表的な治療法は、アルゴンプラズマ凝固法です。
アルゴンプラズマ凝固法とは
アルゴンプラズマ凝固法とは、アルゴンガスと一緒に高周波の電流を流し、それを胃の粘膜に吹き付けることで、粘膜の表面を高温にし、軽い火傷を起こさせて出血をとめたり、出血しそうな毛細血管を焼きつぶす治療法です。
この治療法は最近では、アレルギー性鼻炎に対して耳鼻科でも行われています。
鼻の粘膜を広く軽く焼くことで、鼻詰まりを改善させることができます。
アルゴンプラズマ凝固法の利点
アルゴンプラズマ凝固法では広い範囲を浅く治療することができます。
治療による傷の深さが浅めであり、痛みが少なく、傷の治りも早いです。
アルゴンプラズマ凝固法の実際の治療の流れ
肝硬変、門脈圧亢進症に伴うGAVEに対して私が実際に行っているAPC治療の流れについて説明します。
治療の当日は食事はなし、すなわち、禁食とします。
治療は午前中に行います。
点滴の麻酔薬を投与し、眠っている状態で治療を行います。
食事は翌日から、柔らかいものからスタートします。
食事をだんだんと硬いものにしていき、お腹がいたくなったり、貧血が進んだりすることがなければ、治療がうまくいったと判断しています。
実際の画像:治療前と治療中と治療後

上の画像はGAVEに対する治療前(左)、治療中(中央)、治療後(右)の写真です。
左の画像で粘膜が赤くなっているところが毛細血管が拡張しているところです。ここはとても出血しやすい場所です。
真ん中の画像はAPCで赤くなっているところ、すなわち拡張した毛細血管を中心に胃の粘膜を焼いたところです。
右の画像は治療して、粘膜が焼けたところが治ったあとの、瘢痕治癒した画像です。
真っ赤で出血しそうな血管は消えています。
まとめ
GAVEの治療はAPCです。
APCはアルゴンガスと一緒に高周波の電流を流し、それを胃の粘膜に吹き付けます。その結果、粘膜の表面を高温にし、軽い火傷を起こさせて出血をとめたり、出血しそうな毛細血管を焼きつぶすことができます。
浅く広く治療ができるのが利点です。
治療日は1日、禁食になります。