肝臓のサプリメントに関する真実

はじめに

肝臓に関する悩みや不安があり、肝臓の働きを助けるサプリメントを探している人がいるかもしれません。

たとえば、お酒をよく飲む人で健康不安を抱えている人や飲んだ翌日に疲れを持ち越してしまう人などです。

このような方によく知っていただきたいことがあります。

それは、肝臓の働きをよくするサプリメントはほぼ存在しないと考えた方がいいということです。さらに、サプリメントがカラダに合わなかった場合、逆に肝臓に負担をかけてしまうことさえあるかもしれないのです。

この記事では肝臓専門医である私が、肝臓のサプリメントをおすすめできない理由を解説します。

効果のないサプリメントに高いお金を払い、逆に肝機能障害を引き起こしてしまうような不幸な人が少なくなることを願うばかりです。

肝臓のサプリメントを飲みたい人は何を目的しているのか

肝臓のサプリメントについてインターネットで調べてみると、実にたくさんのものが売られています。

これらのサプリメントの宣伝文句をみてみることで、肝臓のサプリメントを買いたがる人が、どんな効果を期待しているのかを推測することができます。

肝臓のサプリメントの宣伝文句には以下のようなものがあります。

  • お酒をよく飲む
  • 飲む機会が多いけど健康でいたい
  • 元気がほしい
  • 翌日スッキリしたい、持ち越したくない
  • 飲んだ翌日はぐだぐだしてしまう
  • 不規則な生活をしている
  • 偏った食生活をしている
  • 最近、気合が通用しなくなった

以上が肝臓サプリの広告の文章から拾うことができる代表的な内容です。

これらのことから、肝臓のサプリメントを欲している人が望んでいる効能を推測すると、下記のようなものになると思います。

  • お酒をたくさん飲むけど、肝臓を悪くしたくない
  • 2日酔いを避けたい、飲んだ翌日も元気で過ごしたい
  • 慢性的な疲れがたまっており、元気になりたい
  • 不規則な生活、偏った生活をしているけど、健康でいたい
  • 昔より体力が衰えている気がするので、どうにかしたい

以上のように考えている人が肝臓のサプリメントの購入を考えるのだろうということが予想されます。

サプリメントは問題解決にほとんど役立たない

では、実際に肝臓のサプリメントを服用することでこれらの悩みは解決するのでしょうか。

私が考えるに、それは無理だと思います。肝臓のサプリメントを飲んでも、これらの問題は解消されないでしょう。

それを理解するために、肝臓のサプリメントに含まれる代表的な成分などについて、調べることができたことを以下にまとめてみます。

肝臓サプリの主な成分

肝臓サプリには、次のような成分が含まれています。

  • 肝臓エキス
  • ウコン
  • オルニチン
  • シジミエキス
  • タウリン抽出物
  • L-シスチン
  • 米酢粉末
  • マリアアザミエキス
  • タマネギ外皮抽出物

インターネットで検索して上位に表示された肝臓サプリの主な成分にはこのようなものが含まれていました。

これらの成分とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

肝臓エキス

肝臓エキスとは、肝臓水解物のことです。水解物とは、加水分解したもののことです。ですから、肝臓水解物とは、肝臓を加水分解したものということになります。

これがお酒を飲んだときの頭痛、吐き気や2日酔いなどの原因となるアセトアルデヒドの分解を早めてさらにその働きを抑えると言われているようです。

しかし、本当に肝臓エキスにそのような働きがあるのかは疑問に思わざるをえません。

肝臓エキスの正体は、健康な豚の新鮮な肝臓をタンパク質を分解する酵素を使って加水分解したものです。

肝臓サプリの提供元が言うには、豚のレバーには良質なタンパク質やビタミン類が含まれている、さらにBCAAやオルニチンまで含なれているから肝臓におすすめだということのようです。さらに、レバーは臭うというイメージがありますが、サプリメントにしてあるから臭みがないということもウリのようです。

この説明では、肝臓エキスがアセトアルデヒドの分解を早めるという説明にはならないような気がします。

良質なタンパク質やビタミン類はカラダにとって必要な栄養素です。しかし、普通に食事を食べられている人では、不足しません。あえてサプリメントで補う必要はありません。

BCAAは肝機能が低下している患者さんに処方することがあります。しかし、それがアルコールの分解を早めるというものでもないと思います。

オルニチン

インターネットで調べるとオルニチンが肝臓におけるアンモニアの分解を手助けするという情報がでてきています。

肝機能が低下し、アンモニアを分解することができなくなり、意識障害がおこる病気に肝性脳症というものがあります。

肝性脳症に対して医療機関でオルニチンを投与するということはありません。

ですから、世に言われているようなオルニチンの効果も怪しいものであると言わざるをえないでしょう。

ウコン

身近に存在するウコンには、カレーの黄色い香辛料であるターメリックがあります。

ウコンはクルクミンを含み、これが胆汁の分泌を促すと言われています。

医療機関で胆汁の流れが悪くなる病気の人にウコンをすすめるかというと、そんなことはありません。

ウルソデオキシコール酸という薬は使われますが、ウコンは使われません。

ウコンが肝機能をよくするというイメージは間違ったものだと思います。

お酒を飲んでも大丈夫になる肝臓サプリはない

肝臓のサプリメントの代表成分である、肝臓エキス、オルニチン、ウコンについて説明しました。

では、これらを体に取り入れることによってお酒を飲んでも大丈夫になるか、お酒の分解を早めることができるのか、二日酔いにならなくなるのかというと、まったくそのような効果は期待できないでしょう。

慢性疲労をよくする肝臓サプリはない

慢性的な疲れを取る目的で肝臓のサプリメントを使いたがる人がいます。このことの背景には、カラダの疲れと肝臓の働きがとても強く関係していると考える人が多いということがあります。

「ずっと疲れがとれないんですけど、肝臓が悪いんでしょうか」と、自分の疲れの原因を肝臓の問題であると考えて心配されて相談におみえになる方がいます。

たしかに、急性肝炎で肝機能障害が強くでて、黄疸がでているような状態では、だるさが強くでて動くのもおっくうになり、食欲もなくなってしまいます。

また、肝硬変が進んだ場合もぐったりして体の疲れを強く感じることもあると思います。

しかし、健康な人が普段の生活の中で感じる疲れやすさや体のだるさなどは、肝臓に関連しないことも多いです。

肝臓が原因はでない慢性疲労に肝臓のサプリを使うのはナンセンスです。また、さらに言うと、肝臓が原因で本当に黄疸などがでている結果として疲れやすいのでしたら、肝臓のサプリを使うのではなく、病院を受診して検査を受けてしっかりと治療する必要があります。

ですから、長引く疲れに対して肝臓のサプリメントを使うのは、いずれにしてもおすすめできません。

不規則な生活をしている方の助けに肝臓サプリはならない

昼夜逆転したような生活をしている人や仕事の都合で睡眠が不規則になってしまう方で、それでも健康でいるために肝臓サプリを使いたいという人がいるかもしれません。

しかし、肝臓サプリは不規則な生活の悪影響を消し去る助けにはなりません。

不規則な生活の悪影響は、不規則な生活を改善することで取り除く必要があります。

少なくとも肝臓のサプリメントは、不規則な生活の結果、生じるであろう健康上の問題点をなくす働きをもっていません。

体力の衰えを肝臓サプリは改善させない

誰しもが年をとれば体力の衰えを感じます。

10代や20代の頃のようにはいかなくなってぎす。

そこで、手軽に体力を補うものとして、肝臓のサプリメントに手をだしたくなります。

しかし、肝臓のサプリメントには、加齢による体力の衰えを改善させる働きはありません。

むしろ、体に合わなかった場合には、肝機能障害の原因になることもあります。

また、年齢不相応に体調が悪い場合には、サプリメントでごまかそうとするのではなく、病院で検査を受けて原因を調べた方がいいです。

サプリメントが原因の肝機能障害は意外と多い

肝臓のサプリメントに限らないことですが、サプリメントの摂取が原因で肝機能障害がおこることはよくあります。

実際、私達は、肝機能障害が起こっている患者さんを見た場合、新しく飲み始めた薬が何かないかどうか、また、サプリメントや健康食品を何か飲み始めてないかなどを必ず確認します。

このように、薬やサプリメントなどが原因でおこる肝機能障害を薬剤性肝障害といいます。

昔からずっと長く飲んでいる薬よりも、肝機能障害が起こる直前辺りで新しく飲み始めた薬の方が原因になりやすいです。

このようにサプリメントが原因で肝機能障害を起こすことはよくあります。

肝臓をよくしようとして飲み始めた肝臓サプリで逆に肝臓を悪くする可能性があることに注意してください。

一部、病院で処方される薬と似たようなサプリメントもある

数多くのサプリメントがあります。その一部に、病院で出される薬と同じような成分のサプリメントもあります。

これらのサプリは病院の薬に似ている訳ですから、肝臓の役にたたないとは言いません。

しかし、肝臓の状態にもいろいろあります。そのようなサプリメントが有効な肝臓の状態かどうかは、検査をしてみないと分かりません。

私達は普段、薬を処方するとき、しっかりと検査をした上で効果があるた期待される薬を選んでだしています。

ですから、検査や診断も受けずにただ、サプリメントを飲んでも意味がない可能性があります。

また、そのような薬を飲んだ方がいいような肝臓の状態であるならば、病院から薬をだしてもらった方が安いはずですし、また、定期的な検査も受ける必要があるでしょう。

ですから、やはり、肝臓のサプリを自分の判断飲むことにいいことはないと思います。

まとめ

この記事では、肝臓のサプリメントは肝臓の状態を改善しないこと、また、ひどい場合には肝臓を悪くする原因になることを説明しました。

本当に肝臓が悪くて薬が必要であれば、病院でだしてもらうのがいいことも説明しました。

肝臓に限らず、サプリメントの多くはほとんど効果がないと思います。

それでいて、薬剤性肝障害の原因にはなりえますので、気をつけてください。