はじめに

ここでは脂肪肝、脂肪肝炎のうち、アルコールなど、特定の原因がはっきりしないものである、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)についてその概要を説明します。

脂肪肝とは

脂肪肝という名前は一般的になっていますので、聞いたことがある人は多いと思います。しかし、脂肪肝の明確な定義はありません。大まかには、脂肪肝といえば、主に中性脂肪からなる脂肪が、肝細胞に大量に蓄積した状態のことを指します。具体的には生検という組織の検査を行い、組織学的に30%程度以上の肝細胞に脂肪滴が認められるもののことをいいます。

脂肪肝の原因

脂肪肝の原因はいろいろありますので、主なものを下記に示します。

  • アルコール
  • 肥満(栄養過剰)
  • 糖尿病
  • 内分泌障害(甲状腺機能障害、クッシング症候群、副腎皮質機能障害など)
  • 薬物(副腎皮質ステロイド、メトトレキサート、アミオダロン、タモキシフェン)
  • 栄養不良
  • 高カロリー輸液
  • ライ症候群
  • 急性妊娠性脂肪肝

脂肪性肝疾患とは

脂肪性肝疾患とは肝細胞への過剰な脂肪蓄積が原因で肝障害をきたす疾患のことを指します。

脂肪性肝疾患の分類

脂肪性肝疾患は原因によりアルコール性と非アルコール性に大きく分けることができます。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは、原因となる飲酒歴がなく、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎などの明らかな原因が除外された、主に大滴性の脂肪沈着を特徴とする脂肪性肝障害を示す症例の総称です。これは、肝臓におけるメタボリックシンドロームの表現型といわれます。実際、大部分のNAFLDは肥満、糖尿病、高インスリン血症、脂質異常を伴っています。

1986年にSchaffnerらが、飲酒歴がない(20g以下/日)にもかかわらずアルコール性肝障害に類似した肝組織像を示す多岐の成因による疾患群を、まとめて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)として報告しました。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の分類

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)はさらに大きく2つに分けられます。

非アルコール性脂肪肝(NAFL)

非アルコール性脂肪肝(NAFL)は肝細胞障害や線維化を認めず病態がほとんど進行しません。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とは

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は炎症や肝細胞障害を伴い進行性で肝硬変や肝癌の発生墓地となります。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のステージの一部を反映しているととらえられます。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症型が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)ということです。

1980年にLudwigらが多飲歴がない(週1回以下)にもかかわらず、組織学的にアルコール性肝炎に類似し肝硬変への進展を認める原因不明の20例を集め、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という新たな概念を提唱しました。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)の血液検査所見

NAFLDの多くの例でAST・ALT値の軽度上昇(2~4倍程度)があります。アルコール性肝障害と異なり、ALT優位の上昇が多いのが特徴です。ただし、線維化が進行するに伴いAST優位の上昇となります。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の血液検査所見

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)で肝硬変にまで至った場合、AST優位の上昇となります。γ-GTPやALP値の軽度の上昇を認めることもあるが、アルコール性肝障害と比べれば低値です。血清フェリチンの上昇を認めることがあります。進行した非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では血小板数の低下、線維化マーカー(ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン7S、P-Ⅲ-Pなど)の上昇を認めることがあります。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の疫学

肥満者、メタボリックシンドローム患者の増加に伴い、NAFLDの頻度は増えています。検診受診者でNAFLDは25~30%に認められます。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の疫学

NASHの頻度は不明だが、2~3%とする推計がある

NAFLD、NASHの症状

多くの場合、特別な症状はありません。

NAFLD、NASHの画像診断

腹部超音波検査

肝の輝度の上昇(bright liver、肝腎コントラスト増強)
深部エコーの減衰
肝内脈管系の不明瞭化
肝組織で30%の脂肪化がある場合、超音波検査での診断の特異度は100%、感度は89.7%~91.7%と報告されている

単純CT

CT値で肝/脾比0.9%以下は組織学的に30%以上の肝細胞に脂肪滴が認められる状態を反映している

NAFLD、NASHの診断

診断のゴールドスタンダードは肝生検での組織学的検査
Matteoni分類のType3やType4がNASHと診断される

NASHの発症機序

two-hit theoryが提唱されている
two-hit theory:肥満、糖尿病、脂質代謝異常などによる”first hit”により脂肪肝が成立し、酸化ストレスやエンドトキシンによる”second hit”でNASHに進展する
これらの要員が互いに密接に関連した”multiple-hit”が病態の主因と考えられている

NAFLDの治療

食事療法と運動療法が基本
NASHの治療法は確立されていない

NAFLの治療

血糖値、脂質の適切なコントロール
緩徐な体重減少を目指した生活指導(食事療法と運動療法が基本)
急激な減量はNASHを増悪させることがあるため、1~2kg/月の緩徐な減量とする

NAFLDの食事療法

総エネルギー25~35kcal/kg/日とする
タンパク質は1.0~1.5g/kg/日とする
脂肪は飽和脂肪酸を控え全エネルギーの20%以下とする
NAFLDはもともと過度の飲酒はないのでそれを継続する
NASHでは原則禁酒する

NAFLDの運動療法

有酸素運動は筋肉・脂肪組織の代謝を改善し、中性脂肪低下・コレステロール増加を促し、NAFLDを改善する
心血管系合併症がない場合、1日20~30分、週3回以上の有酸素運動を行う

NAFLDの薬物療法

NASHに対する確立された治療薬はないものの、さまざまな報告がある
インスリン抵抗性改善薬
チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン)
糖尿病合併のないNASHで有効との報告があるが、長期投与での有効性、安全性がはっきりしていない
ビグアナイド薬:メトホルミン
明らかな有用性がなく、投与は推奨されない
抗酸化療法
ビタミンE
糖尿病合併のないNASHで改善効果が報告されているため、投与が提案される
組織保護薬
ウルソデオキシコール酸(UDCA)
高用量(28~35mg/kg/日)で改善する報告があるが、常用量での投与は有効性がないr
ペントキシフィリン(日本では発売中止)
改善の報告があるが日本では発売中止
高脂血症治療薬
HMG-CoA還元酵素阻害薬
プラバスタチン、アトルバスタチンはNASHのALT値を低下させるという報告がある
エゼチミブ
NAFLDを改善させるという報告がある
アンギオテンシンⅡ1型受容体拮抗薬
NASHを改善するという報告がある
その他の治療
瀉血
NASHに有効という報告があるが、現時点では推奨されていない
外科的治療
欧米で改善の報告がある

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