肝硬変

非代償性肝硬変の腹水は治らないことも多い

はじめに

肝硬変には代償性肝硬変と非代償性肝硬変の2つがあります。

代償性肝硬変では、目立った症状は認めません。

一方、非代償性肝硬変では、腹水や黄疸を始めとする様々な症状を認めます。

腹水については、治療法としては、利尿剤の内服があります。最初のうちは利尿剤を内服すると、尿がよくでて腹水がよくなることもあります。

しかし、肝硬変がある程度進行すると、利尿剤をたくさん飲んでも腹水はいっこうによくならなくなります。

私は肝臓内科医をしていますが、患者さんからしばしば、この腹水は治らないのでしょうかと質問されます。

この記事では腹水が改善するかしないかなどについて、私の経験をお話ししたいと思います。

肝硬変がひどすぎない場合の腹水は治療で改善する

肝硬変は、慢性肝炎によって少しずつ進行します。

病状が徐々に悪くなるので、腹水もゆっくりとたまり始める方がいます。

このような方の腹水は、利尿剤による治療である程度、たまらなくすることができます。

肝臓の働きが少しずつ悪くなり、腹水もちょっとずつたまるようになったため、この段階で利尿剤を使い始めるとその腹水をコントロールすることができるのです。

コントロールできていた腹水も病状が悪くなればコントロールできなくなる

ゆっくりと出始めた腹水は、最初は少しの利尿剤でコントロールできることが多いです。

この場合でも、肝硬変が進行すると、腹水はさらにたまろうという勢いを増します。そこで、追いかけるように利尿剤の量を増やします。

しかし、増やせる利尿剤の量には限度があります。

まず、利尿剤を使える上限がもともと決まっているという理由があります。また、利尿剤を増やすと副作用も強く出やすいから利尿剤を増やせないということもあります。

いずれにせよ、最初はコントロールされていた腹水も、病状が進行するとより多い利尿剤でないと治療ができなくなり、やがては薬をそれ以上、増やせないときがくることが多いということです。

最初から利尿剤が効かない腹水もある

中には、最初から利尿剤が全く効果を発揮しないような腹水もあります。

それは、かなりの程度、病気が進行して、腹水が多量にたまってからようやく病院を受診し、そこで初めて利尿剤を処方されるケースです。

上述の通り、初期の腹水であれば、ある程度の期間は利尿剤で抑え込むことができます。しかし、多量に腹水がたまるようになってからでは、利尿剤を使っても、それ以上に腹水がたまるペースが速いため、コントロールができないのです。

このようにかなり進行した肝硬変に伴う腹水では、その段階から利尿剤を使い始めても、すでに症状をおさえることができません。

利尿剤が効かない腹水には腹腔穿刺排液またはCARTを行う

利尿剤が効果をもたない腹水に対しては、腹腔穿刺排液CARTという方法で対応するのが一般的です。

腹腔穿刺排液とは

腹腔穿刺排液とは、腹腔を穿刺して排液する行為のことです。

腹腔とは、お腹の中の空間のことです。

腹水は腹腔にたまります。

腹腔を針で穿刺して中の腹水を抜き出すことを腹腔穿刺排液といいます。

腹腔穿刺・胸腔穿刺とは? | 看護に役立つ【ナース専科プラス】

利尿剤でコントロール腹水でも、この方法は直接、お腹の水にアプローチをして抜き出してしまうので、減らすことができます。

しかし、貯まった腹水を無理やり抜いているだけであり、腹水がたまる原因自体がよくなるわけではないので、抜いてから時間がたつと、またたまってしまいます。

それでも、腹水が多くたまるとお腹のはりなどが苦しくて食事がとれないということもあるので、症状を和らげるために一時的にでも抜くことは多いです。

CARTとは

CARTとは、腹水濾過濃縮再静注法のことです。

CARTは、Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapyの略です。

これは、腹腔穿刺排液で抜いた腹水を濾過し、アルブミンなどの有用なタンパク成分を回収して濃縮して、点滴で再度、体に戻す行為のことです。

腹水には、アルブミンをはじめとする栄養成分が含まれています。

腹腔穿刺排液を繰り返すと、体に役に立つ栄養素までもが、腹水と一緒にぬけていってしまうのです。

そこで、抜いた栄養素を濾過して濃くして、点滴で再度注射して体に戻すのです。

CARTとは? | 難治性腹水症に対する腹水濾過濃縮再静注法CART

まとめ

この記事では、治療できない腹水があるのかどうかについてを説明しました。

初期の腹水は利尿剤でコントロールできます。しかし、この場合も肝硬変が進行すると、利尿剤が効かなくなります。

最初から進行した肝硬変の状態であり、それに伴う大量腹水がある場合には、その時点ですでに利尿剤ではコントロールできないことも多々あります。

利尿剤でコントロールできない腹水は、腹腔穿刺排液またはCARTという処置で対応します。

腹腔穿刺排液は、腹腔に針を刺して、腹水を直接抜く方法です。

腹水には栄養素も含まれています。腹腔穿刺排液でどんどん腹水を抜くと体の栄養素も失われてしまいます。

そこで、抜いた腹水の栄養分を濃縮して点滴することで、体に栄養素だけ戻す方法があります。それがCARTです。