B型肝炎の治療薬の一つに核酸アナログ製剤があります。
核酸アナログ製剤はB型肝炎ウイルスが増えるのを直接抑えます。
現在、日本でB型肝炎に対して保険適用になっている核酸アナログ製剤には、LAM、ADV、ETV、TDF、TAFの5つがあります。
この記事ではこれらの核酸アナログ製剤について説明します。
LAM
2000年に保険適用となった最初の核酸アナログ製剤がLAM(ラミブジン、セフィックス)です。この薬はもともとHIV感染症の治療のために開発されたものです。
1日の投与量は100mgです。
副作用はほとんどなく、安全性が高いです。
ただし、耐性ウイルスがでてくる割合が高いため、現在、一番目に使われるべき核酸アナログ製剤ではありません。
ADV
ADV(アデホビル、ヘプセラ)は2004年に保険適用となりました。
重要な副作用に腎機能障害と低リン血症があります。
LAMの耐性ウイルスに対してADVを使う場合には、ADV単独ではなく、LAMとADVを併用するかたちで用います。
ETV
ETV(エンテカビル、バラクルード)は2006年に保険適用となりました。
LAMよりも耐性ウイルスの出現率が低いです。このため、ETVは現在、核酸アナログを使う際に一番初めに使うべき薬になっています。
副作用はほとんどありません。
LAMを飲んでいる人で、血液検査の結果、HBV DNAが陰性となっている方は、ETVに切り替えることがお勧めされます。
ただし、赤ちゃんに奇形をおこす可能性があるため、妊娠を希望する女性への長期間の投与には向きません。また、長期間内服を続けた場合の安全性がしっかりと確認できていません。
LAM耐性ウイルスに対するETV治療
LAMに対する耐性ウイルスが出現した症例に対してETV治療を行った場合、ETVにも耐性をもつウイルスが出現することがあります。
TDF
TDF(テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、テノゼット)は2014年に保険適用となりました。
LAMやADVなど、従来の核酸アナログ製剤が効かない人にも有効です。
長期間、内服すると腎機能障害、低リン血症、骨密度の低下がみられることがあります。ですから、TDFを使っている間は低規定に腎機能と血清リン値を血液検査で調べることがお勧めされます。
TDFは胎児への安全性が比較的高いと言われています。
TAF
TAF(テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、ベムリディ)は2017年に保険適用となりました。
TAFはTDFと比べて肝細胞内に効率よく取り込まれます。治療のために必要な薬の量がTDFよりも少なくて済みます。そのため、TDFと比べて腎機能障害や骨密度低下が少ないです。
TAFの胎児への安全性についてはデータがないため、わかりません。
まとめ
B型肝炎の治療薬の一つに核酸アナログ製剤があります。具体的には、LAM、ADV、ETV、TDF、TAFの5つがあります。
腎機能障害の有無や挙児希望の有無によりこれらの薬を使い分けます。