治療

非代償性肝硬変の腹水や浮腫に対する利尿薬の使い方

はじめに

肝硬変がひどくなると、腹水や足の浮腫がみられるようになります。

腹水とは、お腹にたまった水のことです。

浮腫とは、むくみのことです。肝硬変の患者さんは、足のむくみ、すなわち、浮腫がみられることが多いです。

この記事では、肝硬変患者さんの腹水、足の浮腫の治療薬を紹介します。

腹水

肝硬変の患者さんでは、お腹に腹水という水分がたまることがあります。

腹水がたくさんたまるとお腹が苦しくなり、張ってきます。

下記が腹水が多くたまったお腹の画像になります。

画像引用:病院からのお知らせ|長崎記念病院

こうなるとお腹が張って苦しく、食事も食べにくくなります。呼吸が苦しいと訴える患者さんもいます。

足の浮腫

肝硬変で腹水がたまるようになってしまった患者さんでは、足の浮腫もみられることが多いです。

足がぱんぱんにむくむと、普段履いている靴を履けなくなったり、足の裏の感覚が鈍くなったり、歩くときに違和感を強く感じたりするようになります。

画像引用:Ascites and Edema

このように足のむくみが強い状態では、足のちょっとした傷から水分が染み出すこともあります。

腹水・足の浮腫の治療

肝硬変の患者さんにみられる腹水や足のむくみの治療では、カリウム保持性利尿薬、ループ利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬が使われます。

しかし、これらの治療薬をある程度の量、使ってもコントロールができない腹水や浮腫もあります。

このように内服薬による治療に反応が乏しい腹水や浮腫の場合には、お腹に針を刺して腹水を直接体の外に排出したり、アルブミン製剤を点滴で投与したり、腹水濾過再静注療法を行ったりします。

ここでは主に内服薬による腹水や浮腫の治療である、カリウム保持性利尿薬、ループ利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬について説明します。

カリウム保持性利尿薬

カリウム保持性利尿薬は、肝硬変患者さんの水分コントロールにおいては最初に使われるべき利尿剤です。

カリウム保持性利尿薬には、スピロノラクトンとカンレノ酸塩の2つがあります。

水分コントロールを新たに始める際には、飲み薬を飲むことができるのであれば、通常、スピロノラクトンを25mgまたは50㎎の量で飲み始めます。

飲み薬を飲むことが難しい場合には、カンレノ酸カリウムを200mgで点滴から投与し始めます。

これらの治療を行っても腹水やむくみのコントロールが不十分である場合、または、早く効果がでることを期待する場合には、後で説明するループ利尿薬を併用して開始します。

カリウム保持性利尿薬の注意点

カリウム保持性利尿薬は、効果が出始めるまでに数日間の時間が必要です。ですから、尿がでて腹水や浮腫が改善し始めるまで、少し時間がかかります。

なるべく早く薬を効かせたい場合には、ほかの飲み薬も併用する必要があります。

また、カリウム保持性利尿薬は、血液中のカリウムの濃度を高くする作用があります。

もともと腎臓の働きが悪い人では、カリウムが高めになりがちです。

ですから、腎機能障害のある人では、カリウム保持性利尿薬を使うときには、高カリウム血症になってしまう可能性があることには注意が必要です。

定期的に血液検査を行い、カリウムの値をチェックすることが大事です。

ループ利尿薬

効果はスピロノラクトンよりも強めであり、また、早く効きます。

私はループ利尿薬を使うときは、スピロノラクトンまたはカンレノ酸塩と併用する場合がほとんどです。

これでも効果が乏しければ、アルブミン製剤を投与したり、バソプレシンV2受容体拮抗薬を追加したりします。

ループ利尿薬の注意点

ループ利尿薬を単剤で使った場合、低カリウム血症を引き起こす恐れがあります。

そういう意味でも、ループ利尿薬は前述のカリウム保持性利尿薬と併用して使うのがおすすめであるといえます。

また、ループ利尿薬は、たくさんの量を長期間飲み続けると、腎機能を悪くすることがあるので注意が必要です。

肝硬変の患者さんでは、血液中のアルブミンの濃度が低くなっていることが多いです。

ループ利尿薬は極端な低アルブミン血症があると効果が出にくいため、そのような患者さんにループ利尿薬を使うときには、あらかじめアルブミン製剤を点滴しておく必要があります。

バソプレシンV2受容体拮抗薬

カリウム保持性利尿薬やループ利尿薬を内服してもよくならない腹水や浮腫に対して、次に追加で飲むといい薬がバソプレシンV2受容体拮抗薬です。

この薬は、3.75mgから飲み始めます。

バソプレシンV2受容体拮抗薬を3.75mgという容量で3日間から5日間程度、内服しても十分な利尿効果が認められない場合には、バソプレシンV2受容体拮抗薬を7.5㎎まで増量することが多いです。

バソプレシンV2受容体拮抗薬の注意点

バソプレシンV2受容体拮抗薬は、血液中のクレアチニンの濃度が1.0mg/dL以上になると、効果がでにくくなります。

血液中のクレアチニンの濃度は、腎臓の働きが悪くなると高くなります。

前述した利尿薬であるループ利尿薬には、高容量で内服した場合には、腎臓が悪くなる可能性があると説明しました。

ループ利尿薬をたくさん使い、腎機能障害がみられるようになり、血液中のクレアチニンの濃度が高くなってから、バソプレシンV2受容体拮抗薬を飲み始めても、効果が乏しいということになります。

ですから、バソプレシンV2受容体拮抗薬は、早い段階からその他の利尿薬と併用して使い始めることがおすすめされます。

バソプレシンV2受容体拮抗薬の副作用で重大なものの一つに、高ナトリウム血症があります。

バソプレシンV2受容体拮抗薬により血液中のナトリウムの値が急激に高くなると、脳に重大な副作用を残す可能性があります。

ですから、バソプレシンV2受容体拮抗薬を飲み始めるときには、入院してもらう必要があります。

入院中であれば頻繁に血液検査を行い、血液中のナトリウムの値を測定することができるからです。

とくに、高齢者と体重が少ない患者さんでは、高ナトリウム血症の副作用がでやすいと考えられていますから、より慎重な観察が必要になります。

高ナトリウム血症や脱水の副作用を防ぐために、バソプレシンV2受容体拮抗薬を飲み始めたあとに、のどがとても渇くという症状がでた場合には、適度に水分を補給することが大事です。

通常、腹水や浮腫で悩んでいる肝硬変患者さんには、水分摂取制限をおすすめすることが多いです。しかし、バソプレシンV2受容体拮抗薬を飲んでいる患者さんの場合には、のどが渇いたっ場合には積極的に水分を補うことをおすすめしています。

もう一つ、バソプレシンV2受容体拮抗薬の副作用で大事なものに、肝機能障害があります。これは、バソプレシンV2受容体拮抗薬を飲み始めてから14日以内に起こることが多いです。

この期間は頻繁に血液検査を行い、高ナトリウム血症、肝機能障害やその他の副作用がないかを調べることが大事です。

まとめ

肝硬変患者さんにみられる腹水や浮腫に対して使われる薬に利尿薬があります。

具体的には、カリウム保持性利尿薬、ループ利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬の3つがあります。

まず、カリウム保持性利尿薬を使うのが第一です。続いてループ利尿薬を併用しますが、これでも効果が乏しいときには、バソプレシンV2受容体拮抗薬を早めに追加で内服するといいです。

バソプレシンV2受容体拮抗薬は高ナトリウム血症などの副作用がでる可能性があるため、飲み始めるときは入院して頻繁に血液検査を行う必要があります。