肝細胞癌

PIVKA-Ⅱが上昇する原因

はじめに

PIVKA-ⅡはAFPと並んで肝細胞癌の腫瘍マーカーとしてとても有名です。

ですから、PIVKA-Ⅱは肝細胞癌があると上昇します。

このことはよく知られています。

しかし、PIVKA-Ⅱが上昇しているからといって、肝細胞癌があるとは限りません。

PIVKA-Ⅱが上昇する原因は肝細胞癌以外にもたくさんあるからです。

さらに言うと、肝細胞癌があってもPIVKA-Ⅱが正常であるということもあります。

肝細胞癌とPIVKA-Ⅱは1対1の関係ではないということですね。

この記事では、PIVKA-Ⅱが上昇する原因について解説しています。

PIVKA-Ⅱとは

PIVKA-Ⅱは、protein induced by vitamin K absense or antagonist-Ⅱの略です。

また、PIVKA-Ⅱは、別名でdes-γ-carboxy prothrombin(DCP)とも呼ばれます。

英単語を眺めてみると、ビタミンK(vitamin K)の不足(absense)やプロトロンビン(prothrombin)という単語が目に入ります。

これらについて簡単に解説します。

PIVKA-Ⅱは、肝臓で作られる異常な血液凝固因子です。

血液凝固因子とは、血を止めるのに必要な成分のうちの一つです。

血液凝固因子は第Ⅰ因子から第ⅩⅢ因子まであります。

第Ⅱ因子はプロトロンビンという名前のタンパクです。プロトロンビンは肝臓で作られます。その際にビタミンKが必要とされます。

プロトロンビンを合成する際にビタミンKが不足していた場合、プロトロンビンが作られる代わりに異常タンパクであるPIVKA-Ⅱが作られてしまいます。

PIVKA-Ⅱが上昇する原因

いよいよ本題である、PIVKA-Ⅱが上昇する原因について述べます。

  • 肝細胞癌
  • 慢性肝炎/肝硬変
  • ビタミンK不足
  • ワーファリン内服
  • セフェム系抗生物質内服
  • 抗結核薬内服
  • 肝外性閉塞性黄疸/肝内胆汁うっ滞
  • アルコール多飲
  • 肝細胞癌以外の癌

以下でこれらが理由でPIVKA-Ⅱが上昇するメカニズムなどについて、簡単に説明します。

肝細胞癌

PIVKA-Ⅱは肝細胞癌の腫瘍マーカーです。ですから、肝細胞癌で腫瘍マーカーが上昇するのは理解しやすいです。

上で、正常な肝細胞がビタミンK不足でプロトロンビンを作れないときにできてしまう異常タンパクがPIVKA-Ⅱであると説明しました。

一方、肝細胞癌の多くも正常な凝固因子を作れないため、PIVKA-Ⅱを作ってしまうのです。

この性質を利用して、肝細胞癌があるかないかを判定する材料として、血液検査でPIVKA-Ⅱが測定されるのです。

肝細胞癌の腫瘍マーカーであるAFPと合わせて調べることで、より正確に肝細胞癌の診断をすることができます。

慢性肝炎/肝硬変

肝細胞癌で上がる割合と比べるとかなり低いですが、慢性肝炎や肝硬変でもPIVKA-Ⅱは上がることがあります。

具体的には、肝細胞癌の50%~60%でPIVKA-Ⅱの上昇がみられるのに対して、慢性肝炎や肝硬変でPIVKA-Ⅱが上昇するのは数%~せいぜい10%程度までです。

しかし、少ないですが、肝細胞癌を伴っていない慢性肝炎や肝硬変でもPIVKA-Ⅱが上昇するということは知っておくといいでしょう。

ビタミンK不足

正常なプロトロンビンが作られるためにはビタミンKが必要でした。

ビタミンKがないために正常なプロトロンビンが作られない結果、合成されてしまう異常タンパクがPIVKA-Ⅱでした。

このため、ビタミンK不足でPIVKA-Ⅱが上昇します。

ワーファリン内服

ワーファリンは、血液をさらさらにする薬です。

この薬を飲んでいる人は、ビタミンKを取りすぎないように注意を受けているはずです。

ビタミンKはワーファリンのはたらきを弱めてしまうからです。

逆に、ワーファリンもビタミンKの働きを弱めます。

このことから、ワーファリンを内服しているとビタミンKの働きが鈍くなるため、PIVKA-Ⅱが上昇するということが分かると思います。

セフェム系抗生物質

抗生物質の一つに、セフェム系抗生物質という種類のものがあります。

頻度は少ないですが、これもビタミンKの働きを阻害します。

そのため、PIVKA-Ⅱが上昇することがあります。

実際、セフェム系抗生物質を使用したことで血液の凝固異常がおこった例が報告されています。

抗結核薬

抗結核薬もビタミンKの不足を促してしまうため、PIVKA-Ⅱの上昇の原因となることがあります。

肝外性閉塞性黄疸/肝内胆汁うっ滞

閉塞性黄疸とは、胆管閉塞が原因で胆汁が流れないことが原因で黄疸になるもののことをいいます。

胆汁の流れが滞るため、肝臓の中の胆管が拡張します。この状態を肝内胆汁うっ滞といいます。

閉塞性黄疸があるということは、胆汁の流れが悪くなっているということであり、肝内胆汁うっ滞がみられることが多いです。

本来、十二指腸に分泌されるはずの胆汁が流れが悪いために分泌されないと、長でのビタミンKの吸収に支障がでます。

このため、閉塞性黄疸/肝内胆汁うっ滞があると、ビタミンKの吸収が悪くなるため、PIVKA-Ⅱが上昇します。

アルコール多飲

アルコール性肝障害の人ではPIVKA-Ⅱが2割弱の割合で上昇します。

このため、アルコールをたくさん飲む人では肝細胞癌の発生を調べるためにPIVKA-Ⅱを測定しても、判定が紛らわしくなります。

肝細胞癌以外の癌

肝細胞癌以外の癌、たとえば、転移性肝癌でも一部、PIVKA-Ⅱが上昇することが知られています。

まとめ

PIVKA-Ⅱは肝細胞癌の腫瘍マーカーです。

しかし、肝細胞癌以外が原因でも上昇します。

具体的には、ビタミンK不足で上昇するため、ビタミンKの働きを悪くしたり、ビタミンKの吸収を悪くするようなものではすべてPIVKA-Ⅱが上昇する可能性があります。

たとえば、肝細胞癌、慢性肝炎、肝硬変、ビタミンK不足、ワーファリン内服、セフェム系抗生物質内服、抗結核薬内服、肝外性閉塞性黄疸/肝内胆汁うっ滞、アルコール多飲、肝細胞癌以外の癌などでPIVKA-Ⅱが上昇することがあります。

PIVKA-Ⅱというと肝細胞癌で上昇することが有名ですが、PIVKA-Ⅱの上昇をみても、その他の原因がないかを考えることは重要です。

 

 

 

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